ついさっきのことだ…といっても、この記事が公開されるのはもう少しあとだろうが…トイレの中で便座に座り、僕はこんなことを考えていた。
20数年生きてきて、とりあえず数えるのをやめることができるくらいには本を読んできたと思う。
前々から思っていたが、印象に残る本こそ数あれど、読み返した本というのは実に少ない。
俺が一番好きな本はなんだろうか。ぱっと思いつくのはスティーブン・キングの「IT」だ。
確かあれは中2のころだったか。先日もこのブログに書いた「骸骨乗組員(ミストの原作「霧」が収録されている)」をきっかけとして始まった僕のスティーブン・キング・ブームは、この「IT」で最高潮を迎えた。
一冊あたり600頁ほどの文庫本で、値段は大体600円から800円くらいだっただろうか。それを四冊というのは中学二年生には少し高い。なので僕は一冊づつ買っていたのだけど、結局一晩で読み終えてしまい、さらには続きが気になって仕方ないのですぐに続きを買いにいって、そしてまたすぐに読み終えてしまう。
「IT」はたとえるなら、キングが開園したホラー系のテーマパークのような小説であり、僕はそれを最高に楽しんだハッピーな客だったといえる。
中学二年というと、ほかにはなにがあったか。
忘れもしない。学校祭で初めてステージに立ち、歴史に残る糞演奏をした年だ。
僕はそれが悔しくて、ギターを猛練習した。そのかいあってか、一年後にはそこそこの自信をもってまたステージに挑むこともできた。同時にこの経験から「人は失敗から成長する」のは事実だったんだなあと思い知った。
おそらくはあのときが人生で一番ギターを練習していたし、同時に本もあの頃が一番多く読んでいた。
ということは、現在の僕を構築する要素の大部分は中学二年生のときに形成されているのだ。
「中2病」という言葉があるが、それを恥じることは無い。この病気を経験しなくては、人生は楽しめないよ。
そんなことを、僕は先ほどトイレの中で考えていたのである。
さて、ぼくは「IT」というテーマパークが大好きだったが、結局は一度入ったきりなのだ。
要所要所を読み返すこともあったが、最初から最後まで全編通して読み返したことは無い。
読書はやはり時間がかかるし、その時間があれば新しい本を読むということもできる。なにより、「IT」の内容は今でもよく覚えている…が、今一度ぼくはあのテーマパークに遊びに行きたいと思う。「IT」だけじゃない。あのころに読んだ本をもう一度読む。中学二年の僕をいま追体験してみようというのだ。
僕はあの頃より言葉も知っているし、人間的に成長したかどうかはわからないが、感性はいくらか変化した。
音楽は何度も繰り返し聴くことができる。そして、時がたつにつれて、その音の感じ方も変わってくる。ああ、あれはあんなにいい曲だったんだなという経験が近頃多い。それなら、きっとあの本もそうなんじゃないのか。
別に大いなる目的があるわけではないのだが、あの頃の気持ちというのは、ぼくにとって凄い馬力をもったエンジンになりえるんじゃないだろうか。そんな気がする。そしてそのエンジンが、これからの僕に必要なのではないか、そのような気がする。
中学二年生だったのは、何年も前のことだ。僕はその何年かでエンジンを緩めてしまった。僕だけじゃない、まわりのものすべてがいまは何処か退屈そうに毎日を過ごしてる。楽しい話ばかりはできなくなった。変化することが悲しいことになっていった。
今がもう一度ギアを入れるときだ。
そんな気がしたという話。